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シンデレラガール
 呼ばれて行ったのでは遅くなる。女は言った。
 走ってそこに向かうまでに、自販機の中で値上げが完了して、お客様の用意した300円では足りなくなる。そうなってしまうとこちら側の責任だし、お客様に申し訳ないことになってしまうから。だから、あの場所に常駐し、お客様が訪れた際には、すぐにタスポを差し出せるように備えておくべきです。あの時計は、合っているのだろうか、と言って彼女は壁の方を振り返った。
「何人くらい駆け込んでくるでしょう?」
「2、3人ではないですか」誰かが控え目に答えた。
「誰か、あそこで待ちたい人はいますか?」
 誰も名乗り出る者はいない。
 5分前になり、彼女は自販機の前にいた。誰かがやってくるという気配はまるでなかった。落ち着かない様子で、彼女は自販機の前を行ったり来たりした。確認のためにと100円玉を入れた。1枚、2枚、3枚……。コインは自販機の中を通過して、返却口に落ちてゆく。既に自販機は口を閉ざしたまま、密やかな激しさで生まれ変わるための準備に入っていた。ひとつの試みを受け入れる暇はなかった。誰かが携帯電話を開いてカウンターの上で鳴らしていた。
「午前零時をお知らせします。ピーン!」
 そうして日付が切り替わった。
「おめでとうございます」
「おめでとうございます」
 誰かが言って、誰かが答えた。
「もういいですよ。大げさなことは」
 誰かが言って、携帯電話を閉じた。

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テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/10/15 20:23 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
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