スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【--/--/-- --:-- 】 | スポンサー広告 |
夏休み女
女の伸びた髪が
伸びて伸びてソファーになった
女は座ってゆっくりとした

ソファーを抱えた身になって
どこへ出かけても
いつでも女は楽な姿勢になれた
やがて髪は
伸びて伸びてソファーも伸びた

 お酒は飲めるの?
 うん サイダー
 サイダーを何で割るの?
 サイダーをサイダーで割るの
 じゃあ今度飲みに行こうか
 うん 行けたら行くよ

こらーっ! あんたら ここはコンビニ前じゃない!

女は酒の話を切った
他人のソファーに断りもなく座り
だらだらしているのが許せなかった

女はソファーと共に出かけ
ソファーと共に帰宅した
歩きながら座り 座りながら歩き
歩くことと座ることは結ばれて一つになった

髪は伸びて伸びてソファーも伸びて伸びた

 この前も逆転勝ちしたよ
 そうなの?
 そうなのよ 聞いてよ
 どうだったの?
 先に点を取られてねリードされたのよ
 うんうん
 それでね 最後は勝ったのよ!
 うそー すごいね!
 ほんと すごいよね!

野球の話は尽きなかった
女はかまわなかった
聞くともなしに聞いていた

髪は伸びて伸びてソファーも伸びて伸びて伸びた

 ずっと見続けていたのに
 最終回だけ見逃してしまったの
 というか寝過ごしてしまったのね
 意味ないでしょ
 お母さんを殺そうと思ったの
 だって二度と見られないのよ!
 最終回の人々の生き様って大事じゃない
 絶対見届けないといけないでしょ
 でも それって本末転倒じゃない
 ドラマはドラマでしょ
 でも最終回だよ
 
最終回の話は尽きなかった
女は口を挟まなかった
聞くともなく聞いている内に眠ってしまった
くたびれた時 女はいつでも休むことができた
女の傍でくたびれた人が大勢眠っていることもあった
髪が伸びて伸びて伸びて
女のソファーは余裕に満ちていたから

 グリップのところって
 インクが見えなくて不気味だよな
 ちょうど罪人が目隠しをされて
 最後のステップに足をかけているような感じ
 そんな悲観的なものかよ
 わからないからいいということもあるじゃないか
 曖昧な希望のような
 意外にそれはなくならないんだよ
 切れたと思ったらまた復活したりね
 そうそう 蛍光灯みたいな
 はい

話は尽きなかった
人々の中で
感謝を持って座っている者は誰もいなかった
ソファーが
女の髪の一部だということなど誰も知らず
話に夢中で
ただ

夏の終わりに 女は髪を切ってしまった
スポーツの秋
そう言って歩き出したという話だ


スポンサーサイト

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/29 23:17 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
おや
鉢植えの花の周りを
蝶はよろこんで舞っている

「ありがとう」

「あなたの季語は?」
白い蝶は突然の問いかけに驚いて
飛び回った
花の周りを舞いながら
「私ってなんだっけ? なんだっけ?」

もう一度気を取り直して
「ありがとう 育ててくれて」

「いえいえ こちらこそ」
花は赤く微笑み返した
「ありがとう 来てくれて」

ゆっくり 遊んでいって

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/18 00:02 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
あっち向いてホイ
一本の矢印はとても弱い

別々の方向から

二本三本集まってきて

一つの思い出をさした時

胸の真ん中からあふれてしまう

テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/17 23:45 】 | だいたい5行詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
焼きそば
思いのほか人が多くて
引き返した
雨の日だから
混んでいるという店もある

職場の隣まで帰ってきた
「1時には戻らないといけないが」
10分で焼きそばを食べさせてほしいと言えば
主人は首を振った

誰もいない店
ザーーー
鉄板で焼かれるように
雨が降っている

「僕は何も言いません。一日中黙っていることもあります」

「黙り込む相手がいるの?」

「いたこともありました」

すると御上さんは泣き出した

雨に呑み込まれながら
僕は10分間そのままにしている

テーマ: - ジャンル:小説・文学

【2010/09/17 23:09 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
校庭
隅から隅まで走り回り
まだまだそれでも足りないとついに
校庭を飛び出して裏山を駆け上って行った

夜に隠れて見えなくなった
あなたの名前を長い間呼んでいた
返ってくるのは自分の声
取り残されてひとりで下りた

やがて遠くから
草木を揺さぶる音が近づいてくる
狩りに向かうような激しい速度であなたが戻ってくる
迎えようとする手をかすめて走り去っていく

校庭の隅に向かって
駆けていくあなたの名前を叫ぶ
力強く土を蹴って戻ってきたあなたは
僕を見上げ顎を突き出しながら責め立てた

「まだ帰るには早すぎる」

あなたはまだ走り回る子供で
僕はあなたより少しだけ直立した
子供だった

牙を剥き向かってくる激しい反抗に
僕は怯えながら後じさり
飛びかかってくるあなたを避けようと
校長先生が挨拶をする白い机に飛び移った
闇の中で
あなたの眼が僕を捕らえていた


テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/14 01:12 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
うそっこ
ポケットに手を入れる度に噛み付いた
世に出るためについた小さなうそが
少年の指先を真っ赤にする

誰も知らない逃亡者が
指の隙間から落ちないように
少年はいつも本を読む

つみほろぼし
ひとつまた読み終えて
少年は遂げたように思う
許された虚構の中を通り抜けて
許されて愛されて薄まってゆく
小さなうそ

陶酔を引き裂くように受話器が持ち上がる
ソフトバンクをご利用ですか

はい 家族はみんな死にました

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/13 01:29 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
おぼろげ
深い霧が立ち込めています
選手がおぼろげに球を蹴って
どこへ飛ぶのかその球の行き先を
私は伝えることができません
申し訳ありません

試合は現在続いております
選手がおぼろげに誰かを蹴って
誰かが胸の中から何かを出したような
そのような光景が目蓋に浮かび上がります
申し訳ありません

見張り役の少年と物取り役の少年
話し役の少年が 今夢中で話をしている
埋め込まれた六角形のような瞳が輝いて夜

いよいよ深い霧が立ち込めてまいりました
おぼろげな何者かが霧の中に垣間見えます
敵か味方かあるいは石同然の生き物かもしれません
間もなく試合は一旦中断される模様です
申し訳ありません

「あんたどこの子だい?」
「僕は言葉の子」

だったら

深い霧の向こうから今選手が現れました
ガッツポーズを作りながら老人は
タンクトップの老人は得点を決めました
その背中から朝が生まれ始めているのがわかります

「可能性があるね」

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/12 23:08 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
転送
空模様を訊ねる花のように
折れかけたものが絶えず
窺っている気がする

食われるのはいつも親指
その下から手首までのある一点を狙う
奴らは伝言板を踏襲している

足踏み
信号待ちの巨木がひとつ
完全な誤作動を思わせたのに
遅れてやってきたもうひとつのせいで
優美な踊りに変化するのだ
取り込まれそうな誘惑を微笑でかわして

夜の街繰り出し始めた僕たちの夜はこれから僕たちのいる

歩く
首を曲げた時に横たわるもの
笑っているのはこちら
クリックの風が吹いて無数の手の平が舞う
まちがいだらけの手の平が札を覆う

歩いていて笑ったのではない
笑ったいたら足跡ができただけ
ちょうどいま聴きたかった曲が
リクエストされただけだった夜の

絶えず揺れているのはフィルム
窺って震えているのはフィルム

デバイスに転送します
自負をセットしてください
他意はみあたりません


テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/11 17:16 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
デメキン
目玉に餌を……
言いかけて笑う
さっきまで目玉を焼いていたから

メダカに餌をやろう

言い直したところ
どうやらそれも間違っていて

投げる

水槽の中には2匹の金魚
口をぱくぱく歌に夢中

興味はないけれど
流れる
歌の一節が
餌を捕らえる


テーマ:詩・ポエム - ジャンル:小説・文学

【2010/09/10 20:07 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
真ん中
ふたつきが過ぎようとしていた
電話の前で
母は泣いている

「ユウちゃんの運動会に行かないとね」
と言っていましたが
できないままに終わってしまいました
今もこのような状態でとても
今年は行けそうもありません

一緒に
相談していた過去と
行くはずだった未来の
風景
その真ん中に挟まれて

萎れてしまう

テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/10 17:16 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
鈴木
いっちゃんの名が

どうしても思い出せない

浮んでくるのは鈴木

いっちゃんは鈴木ではない

それだけが今はっきりとした

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/10 15:34 】 | だいたい5行詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
帰省
こっちに帰ってこないの?

(出て行かないの?
昔 そう言った人はいなかったか)

今 帰っているじゃないか
それで よくはないだろうか

田舎でも どこでもいい と思った

僕を

ひとりにしてさえくれれば

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/10 00:24 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
ループ

はなすなら今
今だって今だって
誰かが吹きかけるので

頼りなく伸び切って
今にも切れてしまいそうなそれは
磨耗と不安によってふるえている
あああ

馬鹿野郎
こいつはまだ500年行けるぞ
と先生が掴んだ瞬間ついに切れて飛んでいく
先生さようなら それっきり

町内会の人の親切心が
置いていった言葉を拾ってくる
じいちゃん、じいちゃん
あの子の響きがじいちゃんを思わせるから
じいちゃんの言葉 置いてきたのに

誰の仕業か 川の向こうにありました
大事なものでしょう
一緒に先生も拾われてくる

あなたはさよならした人だから
もう先生じゃない
さよならした人と口なんか利いたら
さよならの仲間になってしまうから

「さよならを言うために先生戻ってきました」

退屈なお化け屋敷の通路のように
誰もが素通りしていく
先生の羽は花の上に留まって
次の風を待っている


テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/09 18:58 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
風通し
普通に窓も開いていて
エアコンもついていたりする
しきりに猫が入ってくるが
戸が開いたままになっている
そういう家だった

コラッ!
と言っても猫は
もたもたとしている

まあ 猫なのだから

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/09 17:08 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
もつれ
お供えの鯛を降ろして
お吸い物にする
頭が一番出汁が出るという
(父は頭で亡くなった)

父も吸い物が好きだった
熱いのが好きで
「熱くしてくれ」

ゆっくり食べるため
途中でまた
「熱くしてくれ」
と言った

結ばなくてもいいのに
どうしようもなく結びついて
容易くは切れないのだった


テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/09 00:50 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
ホテイアオイ
ホテイアオイを
三つもらって
池に沈めた

根本に
卵がついていて
メダカが産まれた

イモリばかりだった
池が
少しだけ豊かになった

「ほら あそこにも」

今はまだ白いけれど 
その内に赤くなるはず


テーマ: - ジャンル:小説・文学

【2010/09/08 16:26 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
キャラメル
その甘いお菓子は
凝縮された
4月と5月

その硬いお菓子から
溶け出してしまう
最後のみじかい夏

先のことがわからないから
人は
準備をし、約束をし、プレゼント
してしまう

テーマ: - ジャンル:小説・文学

【2010/09/08 15:42 】 | 好きに書いた詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
とにかく風のことを描いていた

風を

想い、信じ、案じ、称え、受け入れ、愛し、聴き、妬み、望み、
羨み、呪い、頼り、待ちわび、憂い、慕い、尊び、蔑み、迎え、
歌い、

もっと、もっと、もっと、
白い
カーテンを見つめている


テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/08 12:26 】 | 好きに書いた詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
75歳
この町では
75歳になるとみんな亡くなる

それは決まりきったことで
みんなわかっていることだ

(あんなに元気そうだった)

大丈夫
まだまだ生きるよ
と言っていたのに
やっぱり亡くなってしまったね

みんな 微かに
期待はしてしまう

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/08 00:35 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
あの世この世
黒く汚れた粒たち
みるみる吸い込まれてゆく
地の底ではギザギザのビスケットたちが
唸りを上げて待ち受けている

中心から中心から沈んでゆき
業をとかれ
世界の裏へと送り届けられる

そこのところは誰も知らない

やがて真っ白い新しい形となって
ざーざーと降り注ぎ
落ちてゆくけれど
今度は人間が待ち受けている
人間の
よろこびの手が

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/07 22:17 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
生存のすすめ
生きなきゃなあ
何があっても
生きなきゃなあ

そんな風に繰り返したのは
深くなったお酒のせいだったろうか

残留しなかったのは
親が売らなかったから
鉄の龍に詰め込まれて
流れるままに流されて
服を食べて生き延びた

雨が大粒になってきたが
叔父さんは道の真ん中で動じない
僕も
雨に触れない

車が近づいてきたが
警笛を鳴らすこともなく止まった
生きるか死ぬかの話だ
立ち入るものは何もない

【2010/09/07 16:34 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
あなたはもうじっとしていなさい
疲れたでしょう
(その時僕はじっとしていたのだが)

「酌に行け」と姉が言うのです
そのことばかり気になって
僕は気分が晴れないのです

そんなに姉さんが怖いのかね
ふふふふふ

号令は母からだった
僕はすぐに旅に出た
(行きたかったのかもしれない)
知らない人のところへ 瓶を持って

次男の方か?

知らない人は僕のことを知っている
父にパソコンのことを教わっていた

父の話をし始めた

「それは前、あなたに言いました」

父は言った。
「ノートに書いてますか? ちゃんと」

ノートに厳しい
あの父だ

あなたは父の友人ですね

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/07 15:58 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
50日後の花火
ガッチャマンとか
かっちゃマンとか
言っているが
チャッカマンに違いない

バイキングをすると言っているが
バーベキューに違いない

*

多いと言って香取線香を千切ってしまう
もうこれで蚊はいなくなるからと言う

燃え尽きてしまうと訴えると
その時には蚊は滅びていると言う

*

待ち受けはじいじとユウちゃんになっている
設定してなったのではなく勝手になったと言う
時々
ユウちゃんだけになったりもすると言う
母は鋏を捜している

*

蟻が出たと階段を駆け下りてくる男
「どうして蟻が?」
「家を食べるのかも」

「シロアリではない!」
強く否定する母

人にやさしく虫に厳しい

殺虫剤を掴み裏に虫眼鏡を当ててじっと見ている
ハエ成虫 ゴキブリ成虫 ノミ ……

蟻はいないか

*

何かおかしいね
確かに雲がおかしかった
夕立が来るかもしれないね

夕立雲が濃く厚く集まってきていた

「まあ いいことだけど」

今晩はバーベキューだった

*

手で掴んで
ユウちゃんは大好きなウインナーを食べた
汚れた手は
バアバのシャツで拭いた

つけてもつけても消えるだけ
あれ 線香花火というのは
こちらを持ってするものだった

「みんなでやろうよ」

ユウちゃんが呼びかけて
みんなでやると
すぐに花火は終わってしゅんとなった

*

クリームソーダが好きだった
グラスの上に浮ぶクリームを眺め
これはいいと言って
深いグラスを買って帰った

客が来る度に出した
お茶を出すということは
クリームソーダを出すことだった
一年ばかり 続いたという

*

元気だったのにね
じいちゃん
元気だったのにね

大勢の大人たちに交ざって
神の使いの歌声に
じっと耳を傾けて
額に納まったままのじいちゃん
その存在をその不在を薄っすらと
ユウちゃんはわかりはじめていた

これ じいちゃんの眼鏡
じいちゃんの 大事な眼鏡
だから
しまっておかないと

*

どこへ行くのという方に
庭の木はそれぞれの好きに伸びていた
地面すれすれのもあって
とても腹筋が強そうだった

「夜露が落ちるのでね

田舎の朝は涼しいでしょう」


テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/07 13:01 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
駆け落ち
ぽん酢を入れて
振って出せばいい
おばあちゃんの知恵のように言う
「それは今、思いついたけど」

シャンプーで水鉄砲するみたいなことだな

小さく寂しくなったものを
みんなの力を借りて引っ張り出してしまう

おーい マヨネーズちゃん

一緒に キャベツ畑に行こうよ!

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/04 00:50 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
再来
山口駅では切り離し作業が行われます
(簡単に切り離せるものか)

ゆだ
今まで何ともなかったのに
その二文字をきいただけで
瞬間的に父が戻ってきてしまう
僕の前に座る白髪の男は
誰だ
いつからいるのだ
父か
父ではないのか
顔を上げて見ることができない
小さなラジオのようなものを触っている
男は急に席を立った
(切り離し作業に向かう)

「ごめんなさい」
おばあさんが杖をついて入ってくる
隣におじいさんがくっついて
母と父か
僕は顔を上げて見ることができない
二人は特に話をしない

(切り離し作業が続いている)

時折きんきんと音がきこえる

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/03 21:02 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
重ねて申すもの
重ねて申すものが申す
重ねて申すだけ前の言葉がみえなくなるため
くれぐれも重ねないよう重ねて申し上げる

あなたの方こそいつも重複を着込んでいるくせ

積み重なる弱音のひとつひとつが
あつくあつく私を勇気づける不思議

ついにツイートは短歌と同音になる
音と音が重なって
意味を追いかける意味は無意味

重なって重なってあふれ出て押し出されて

音楽に疲れたら詩を書こう

指を使わせて 永遠の圏外を泳ぐ
見えない尾びれに続けてただ
重ねて重ねて重ねて

ドーナツは灯台のように高まったけれど
天辺から世界を望むより
私はひとつの輪を抜き取って口にしたい


朽ちかけた洞窟の深奥に閉ざされた
自分だけの糸はとかれて
流れ出てくる

重ねて申すものが申す
遠く深いところにあるものは
凶器にも宝物にもなるのだから
用心に用心を重ねるよう重ねて申し上げる
重ねて申すだけあなたを思っているということを
重ねて重ねて申し上げる

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/02 14:29 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
納骨
 二人くらい来てくれればいいと言った。母と兄と上がった。あとからあとから親戚や町内会の人、15人が上ってきた。墓は山の麓にあった。伸び放題に竹が伸びて、墓の上空を貫いている。兄が石に触れるが持ち上がらなかった。
「まだです」
 神主は墓の上に壷を置き、挿されたばかりの花の横に火を灯すと、鶴のように石の上に降り立って歌い始めた。一生分の歌。感情も風景も些細なことは排除したあらすじだけの大雑把な歌の途中に、再び母の名、家族の名。15人は、石の囲いの外に立ったまま、最上階に上った太陽に焼かれながら鶴の後姿を見つめていた。風が強い。落ちてくる。落ちてくる。ひらひらと天使の羽根が、竹の山から落ちてきて、花の上に乗った。壷の向こうから黒い煙が上がる。
「大丈夫でしょうか」
 壷に燃え広がることを心配して母が言った。
「左の蝋燭だけ消しましょう」
 長い歌が終わると石が開き、深い墓の底に光が射し込んだ。(こんなところにまで竹が生命を伸ばしている)
「下りてください」
 光の届かない世界に壷を沈めるのは僕の役目だ。
 蓋を開ける。
 骨は、夕暮れのようだった。

テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/02 00:43 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
別世界
(なぜいないというメンバーを今から発表します)

佐藤
鈴木
田中
中田
山田
小林
三浦
香川
西川
石川 ナオ。彼らは試合には出場しません。少なくともこの世界においては……。

【2010/09/01 22:25 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
詩のひとつ
始まったな
あんたの得意のメモ

ひとつも読めんが
カタカナくらいが 辛うじて読める
それでそれはそのあとどうなる

(詩や小説になります)

短歌や小説はわかるが
詩はどうもわからない

(僕にはその区別もわからない)

せっかくだからひとつ

Fさんは自作の短歌を
僕のメモ帳に ひとつ書いてくれた
力強く縦に
それは罫線に逆らって書かれていた

僕はそれを読みながら
自分の歌のこと
お返しのひとつを探していたのだ
けれど

【2010/09/01 20:22 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
元カフェ
店の前を通った瞬間
車は折れてきた

やあ 入りなよ

汚いだろ
元カフェの退廃を自慢しながら
コーヒーを注いでくれる

いつかな

長い間
彫の深い顔はこちらの顔を見ている
顔の中に
答が留まっていると信じているように
黙って

三人で遊んだ 時だ

友達の記憶のあとを追いかけていくけれど
いつまでもそれはおぼろげだった

あいつはもういないけど

睡眠薬を飲みすぎて死んでしまったという
一年前……
僕はそれも知らなかった


テーマ:自作詩 - ジャンル:小説・文学

【2010/09/01 16:31 】 | 言葉のある詩 | コメント(0) | トラックバック(0) |
| ホーム | 次ページ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。